時々においがしにくい、徐々に、においや味が分かり辛くなった気がする
このような症状に心当たりはありませんか?
その様な場合、難治性の好酸球性副鼻腔炎可能性があります。
「副鼻腔炎?全然痛みもないし、よく聞く膿のようなものも出てこないから大丈夫だよ」と思うかもしれません。
しかしそれは、好酸球性副鼻腔炎というこの十年ほどの間に全世界で急増している新しいタイプの副鼻腔炎かもしれません。
これは日本でも多く報告されており、むしろ海外よりも割合が高いとの指摘もあり2015年に国の難病指定疾患となりました。
ひと昔前の副鼻腔炎は、感染性のものがその殆どを占めており、こちらは抗生物質の普及によって急激な減少傾向を辿り手術の必要性も限定的となりました。
しかし現在、その感染性副鼻腔炎にとって代わったのが先ほどの難治性好酸球性副鼻腔炎です。
こちらはアレルギーの関与が指摘されていますが根本的な原因は未だ解明されておりません。
最近の当クリニックにおける手術症例は、5割から7割がこの好酸球性の副鼻腔炎です。
主な症状は嗅覚障害で、「現状では痛みもなく日常生活に大きな支障がないため、もう少ししたら治療しよう」等と思っているかもしれません。
クリニックに手術希望で来られる方はずーっと我慢しておりポリープが大きくなり鼻呼吸できなくなり受診する方も多いです。
しかしそれは、人生を豊かなものにするための貴重な五感の一つを失ってしまう危険性もあるのです。嗅覚の低下をきたすと味覚の中でも風味が失われてしまうため五感の2つの低下の可能性もあります。
他の感覚同様、嗅覚も一度失われてしまうと治療をしても機能を完全に取り戻す事は非常に困難です。これは例えると一度枯れた草花に肥料や水をあげても戻らない事に近いです。嗅覚障害はそのため早期の発見と治療が推奨されます。
確定診断は鼻の中にできたポリープを切除して病理検査をすることが必須になります。
切除は外科的加療によって行われますが、手術をしても難治性であるために再発する可能性はあります。
しかし、術後の再発に対しても近年非常に効果の高いバイオ製剤が開発されコントロールが格段に良くなっています。
現在のところ、このバイオ製剤は非常に高額なのですが、難病認定を受けることで比較的安価で使用することができるようになっています。
好酸球性副鼻腔炎の治療を行う上で手術は再び脚光を浴びるようになっていますので、嗅覚に不安を感じる方はまず一度クリニックを受診して原因を確定する事をお勧めします。
またコロナ感染後に嗅覚障害を感じた方もいらっしゃるでしょう。
嗅覚の大切さは普段意外と軽視してしまいがちなのですが、治療によって嗅覚を取り戻した皆さんの喜びは、非常に大きなものであると診療をしていて日々感じています。
自己判断せず、専門医の診察を受けて頂く事をお勧めします。